最初のテンション低下だけで、次の張り替えを決めていませんか
ある人は「13%落ちた」と言い、別の人は「5%も落ちていない」と言う。同じラケットの、同じ時点の状態でも、どこを基準にするかで両方が正しくなります。

「このストリングは6ポンド落ちた」。それだけで十分な情報に聞こえますが、肝心なことが抜けています。マシンで引っ張ったときから6ポンドなのか、ラケットをマシンから外してからなのか、それとも最初に打ったあとからなのか。出発点が分からない数値は、初期に起きる変化を製品への不満に変えてしまうことも、その変化を記録から見えなくしてしまうこともあります。
実験結果ではなく、説明のための仮の記録を見てみましょう。あるプレーヤーが50 lbでの張り上げを依頼しました。同じ機器と設定で測ると、張り上がったラケットは46 lb。初回のプレー後は42 lb、その後さらに使うと40 lbになりました。最初の46 lbを基準にすると、最終値は約13%の低下です。一方、初回プレー後の42 lbを基準にすると、約4.8%の低下になります。どちらも計算は正しく、見ている期間が違うだけです。
| 記録する項目 | 説明用の数値 | その数値が表すもの |
|---|---|---|
| 依頼したマシン設定値 | 50 lb | ストリンギング時に指定した引張力の基準。完成したストリング面を測定した初期値ではない。 |
| 張り上がったラケットの測定値 | 46 lb | 初期の測定基準。張り上がりから測定までの時間も記録する。 |
| 初回プレー後の測定値 | 42 lb | 時間の経過と、最初の打球による変化をすでに含んだ基準。 |
| さらに使用したあとの測定値 | 40 lb | 比較する時点の値。どの過去の測定値を基準にするかで低下率が変わる。 |
どれか一つを基準に選ぶこと自体が間違いなのではありません。説明せずに基準を切り替えたり、自分の初回プレー後の値と、別の人の張り上がり直後の値を比べたりするのが問題です。それでは、手元にある情報以上に厳密な比較をしているように見えてしまいます。初期の測定値を後の値で上書きせず、それぞれの段階を分けて残すほうが、道具の違いを判断しやすくなります。
経過時間、打球、保管環境を分けて考える
まずは、張り上げてからの経過時間です。ストリングは、最初のラリーまで変化せずに待っていてくれるわけではありません。応力緩和はストリンギングの途中から、その後にかけて進みます。RacquetTuneの開発者による、マシンの設定テンションと完成後のテンションの違いを説明した記事では、クランプの動き、フレームの変形、クロスストリングとの摩擦、メインストリングが編み込まれたときの形状も要因として挙げられています。そこで示される数値例には特定の前提があり、どんなラケットでもマシン設定値から同じ数値を引けばよい、という意味ではありません。
次に、どれだけ打球を受けたかです。Crawford Lindseyが2013年3月21日に公開したTWUの研究『How Tennis Strings Go Dead—Part 1』では、繰り返し衝撃を与える実験で初期に大きな変化が起こり、その後は異なる変化の仕方を示しました。ただし、実験室で加える衝撃を、そのままプレーヤーのフォアハンド何球分と置き換えることはできません。この研究が示しているのは初期段階とその後を区別する重要性であり、すべてのポリエステルが一定のプレー時間で落ち着くという保証ではありません。
そして、ラケットが置かれていた環境です。TWUが2016年6月6日に公開した温度の研究では、温度とテンションをかける条件を変えてストリングを比較しています。その実験では、テンションをかけて緩和させたあとに加熱すると、特に大きな低下が見られました。また、引っ張っておく時間と緩和の関係も示されています。昼に受け取って暑い車内に置いたラケットと、室内で保管したラケットでは、まだ一球も打っていなくても同じ条件で午後を過ごしたことにはなりません。
だからこそ、「張り上がりから3時間」と「プレー時間3時間」は別々に記録する必要があります。同じ理由で、初期のグラフの急な傾きを、そのまま先の期間まで延ばして予測することもできません。初回プレーの前後で4ポンド変わったからといって、それ以降も毎回4ポンドずつ落ちると決まったわけではないのです。

完璧な測定時点を探すより、二つの基準値を残す
張り上がり後の早い段階で測る値は、「この仕上がりを再現できるか」という作業上の確認に役立ちます。一方、いつもの初回練習を終えたあとの値は、「コートで感触を確かめた状態から、どう変わるか」を見る基準になります。どちらも有用で、片方を残すためにもう片方を消す必要はありません。どちらかだけを「本当のテンション」と呼ぶ必要もないのです。
初期値を残すときは、張り上がった時刻と測定した時刻を記録します。機器、その機器に入力するラケット情報、測定の扱い方は、説明書に従ってそろえましょう。翌朝まで測れなかったなら、その事実を書いておけば十分です。「翌朝の測定」と明記された数値のほうが、実際にいつ測ったのか分からない「張り上がり直後」の数値より役立ちます。
プレー後の基準には、無理なく繰り返せる初回の練習内容を選びます。時間だけでなく内容も残してください。軽いウォームアップ、かご一杯のサーブ練習、競った1セットでは、ストリングが受ける打球は違います。初回の内容が毎回変わるなら、それも記録に残します。目的は自分にとって実用的な比較をつくることで、材料試験の研究室と同じ条件を装うことではありません。
プレー後にどこで、いつ測ったかも分かるようにしておきましょう。打ち終えてすぐ日差しのあるコート脇で測った値と、数時間後に涼しい室内で測った値を、無条件に同じ条件として扱うことはできません。可能な範囲で似た条件の測定値を比べ、普段と違う数値は黙って削除せず、状況を添えて残します。どのラケットでも、どの測定方法でも、一定時間待てば公平に比較できるという根拠は、ここで取り上げた資料にはありません。
ストリングの比較は、低下率を計算する前から始まっている
二つのポリエステルから選ぶ場面を考えてみてください。一方は張り上がり直後と、強度の高い初回練習のあとに測定しました。もう一方は、翌日に少し打ってから初めて測定しました。後者のほうがテンションを維持しているように見えても、実際には初期変化の一部が記録を始める前に起きただけかもしれません。あとから低下率を計算しても、抜けている履歴は埋まりません。
役立つ比較にするには、フレーム、ゲージ、張り方、測定する段階を、実際にできる範囲でそろえます。マシンの設定値は別項目として残しましょう。設定値が同じでも、素材が違えば同じ硬さや同じ初期低下になるとは限りません。同じ設定テンションで製品を比べたいのか、それぞれを好みの打球感に調整したセッティング同士で比べたいのか。どちらも意味のある問いですが、同じ比較ではありません。
低下率は、それぞれの出発点に対する変化を捉えるのに便利です。ただし、実際の数値の差が見えにくくなることもあります。最初の測定値が違えば、低下率が同じでも最後の状態は同じとは限りません。測定値そのものも見える形で残し、日付、プレー時間に加えて、「いつもの深さに無理なく返せる」「コンパクトに返すリターンの収まりが読みにくくなった」といった短いメモを添えましょう。テンション維持率をそれ自体の優劣で終わらせず、次の判断につなげられます。
一貫して測れることと、絶対値が正確なことは別
変化を追うのに役立つ機器でも、表示値がほかのすべての機器とそのまま置き換えられるとは限りません。RacquetTuneの開発者が紹介した測定では、ロードセルで中央のメインストリング2本を監視する一方、アプリではラケット全体の応答を追っています。そのWilson kTour Teamを使った特定の条件では、変化の傾向はよく一致したと報告されていますが、測っている対象が違うため、絶対値には差がありました。
この記録は、Kirschbaum Proline IIの1.25 mmを張った1本のラケットを、35日間、合計8時間のプレーにわたって追ったものです。何を測っているかが重要であることを示す参考例ですが、音を使うすべてのアプリを独立して検証した研究でも、ストリング寿命の一般的な予測でもありません。自分の記録への応用は明確です。機器と入力条件をそろえ、方法を変えたときはその旨を記録する。互換性のない二つの測定履歴を、何も変わらなかったかのようにつなげないことです。
繰り返し測って近い値が出れば、その条件での再現性を支持する材料にはなります。それだけで絶対値の正確さが証明されるわけではありません。反対に、マシンの設定値と合わないからといって、ストリンガーか測定機器のどちらかが間違っていると即断することもできません。数値を議論する前に、何を、いつ、どの設定で測ったのかを確認しましょう。
次の張り替えと比べられる記録にする
次に張り替えたら、初期値、初回プレー後の値、その後の値をまとめて残してください。張り上がりから全体としてどれだけ変わったかを見るときは初期値を使い、感触を確かめた状態から先の変化を見るときは初回プレー後の値を使います。グラフにも、どちらが基準かを明記しましょう。最初の練習が普段と違ったなら、グラフを整えるために出発点を選び直すのではなく、その違いを書き添えます。
条件のそろった張り替え記録がいくつか集まると、初期に大きく落ちても好みの状態が長く続くことや、後半のテンショングラフが平らに見えても好みの反応は失われていくことに気づくかもしれません。一つの低下率だけでは分からない情報です。目指すのは、好きなストリングが最もよく見える基準を探すことではありません。再現したい状態を見つけ、その履歴がどこから始まったのかを正確に把握することです。
出典と参考資料
TENNIS TENSION LAB
今日、ラケットのテンションを確認しよう。
10秒以内にストリングのテンションを高精度で測定。Tension Labが初回測定からの変化を記録し、張り替え時をわかりやすく示します。
- ストリングのテンションを高精度で測定。 10秒以内に完了。
- 打球感の変化を クリアな記録に。
- 張り替えどき、 もう感覚だけに頼らない。