競技の舞台裏

ダブルスで「下がって!」と叫んだだけで失点? 浅いロブの場面で問われること

「パートナーに言っただけ」では一律に免除されません。ボールの向き、相手への影響、申し立てのタイミングが、浅いロブをめぐる争いを分けます。

USオープンのコートで一緒にウォームアップするマルチナ・ナブラチロワとアランチャ・サンチェス・ビカリオ
2019年USオープンのレジェンズ・エキシビションに向けてウォームアップするナブラチロワとサンチェス・ビカリオ。ダブルスのペアを示す資料写真であり、妨害や判定の争いを記録したものではありません。Beyond My Ken · CC BY-SA 4.0 · WebP

自分のロブが浅くなり、パートナーはまだネット際にいる。「下がって!」と叫ぶと、スマッシュに入ろうとしていた相手が一瞬ためらい、その声でポイントを失うのかという言い争いになります。「パートナーに話しかけただけ」は十分な弁明に聞こえます。しかし、審判が付かない試合に関するUSTAの指針では、それだけでは足りません。誰に向けた言葉かより、ボールがどちらへ進み、相手にどう影響したかが問題になります。

相手側にも同じくらい大切な制限があります。通常、まずスマッシュを試し、ミスしてから相手の声を保険に使うことはできません。公表された事例は、申し立てのタイミングを求めています。この両面を理解するほうが、「ダブルスはいつでも話してよい」あるいは「常に黙るべきだ」という決まり文句を覚えるより役立ちます。

浅いロブの事例は、すでにルール資料にある

USTAの「Friend at Court」2026年版には、審判のいない試合の手続きを示す「The Code」が収められています。第34項は、弱いロブを打った選手が「get back」と叫ぶ場面を挙げています。それで、まさに打とうとしている相手の注意がそれた場合、相手は故意の妨害としてそのポイントを求めることができます。一方、相手がロブを打つことを選んでミスしたなら、申し立てが遅いため、そのポイントを失います。

これは、声の大きいダブルスペアを罰するために作った独自解釈ではありません。USTA自身が説明に使っている場面です。同時に、聞こえる言葉を1つ発すれば必ず失点する、という意味でもありません。事例には相手のプレーへの妨害が含まれ、結果は相手がその後どう行動するかにも左右されます。どちらかの条件を省けば、別の事例になってしまいます。

人に伝えるときは適用範囲も明確にしましょう。「The Code」はUSTAの審判が付かない試合向けの指針であり、あらゆる協会の大会手続きや主審の判断を丸ごと置き換えるものではありません。基本となるITFルール26は、妨害された側がポイントを得る故意の妨害と、ポイントのやり直しにつながりうる意図しない妨害や外部の出来事を区別しています。ここで扱う具体的な声掛けや申し立ての方法は、USTAの文章による補足です。

会話の相手だけでなく、ボールの向きを見る

USTA「The Code」第34項が示す、ダブルスのポイント中の会話の区別。ルールに基づく場面であり、写真の選手が起こした出来事を示してはいません。
場面指針の内容誤って広げてはいけない解釈
ボールが自分たちへ向かっているダブルスのパートナー同士の会話は認められる。相手がプレーする能力を妨げる発言まで認められるわけではない。
ボールが相手コートへ向かっているダブルスの選手は話すべきではない。パートナー向けの言葉だからといって、自動的に例外にはならない。
浅いロブの後の警告が、まさに打とうとしている相手を惑わせる適時に申し立てれば、故意の妨害として相手がポイントを得られる。すべての音が自動的に失点になるわけではなく、ミス後に改めて申し立てる機会もない。

こちらへ来るボールを誰が取るかという声掛けと、甘い返球がすでに相手へ向かっているときの警告は、別のタイミングです。前者は自分たちが打つショットの準備を助けます。浅いロブの事例では、後者は相手の準備に割り込んでいます。声量を下げれば必ず解決するわけでもありません。基準は妨害の有無であり、本文に示されていないデシベルの境界ではないからです。

「故意」という言葉も議論を招きます。選手は、不正をするつもりではなく善意の注意だったと主張するかもしれません。しかし、それだけで公表された事例が故意の妨害でなくなるわけではありません。なぜポイントを失いうるかを説明するために、相手を不誠実だと非難する必要はありません。ルール資料は、その場面で自ら選んで出した声を、けがや蜂に刺された際に思わず出た叫びとは分けて扱っています。

打ち続けると、申し立てが遅れる理由

第33項は、妨害を申し立てる選手ができるだけ早くプレーを止めなければならないとしています。声で本当にスマッシュを乱されたなら、ここを覚えておきたいところです。ショットが入るかどうかを見るまで待たないでください。「The Code」の浅いロブの事例は、打つことを選んでミスした後にポイントを求めることを明確に認めていません。すぐに申し立てれば、その時点の中断を示せます。遅れた申し立ては、同じショットにもう1つの結果を求めるように見えてしまいます。

迅速に申し立てることと、大げさに対立することは別です。声がショットを妨げたためプレーを止めたとすぐに伝え、タイミングと起きたことを説明します。「スマッシュを打とうとしているときに声がかかった」は、「いつもうるさい」より有用です。大会のオフィシャルに対応してもらえるなら、事実の相違を人格への非難に広げず、判断に加わってもらいましょう。

ダブルスでネット付近にいるセリーナ・ウィリアムズと、その後ろでプレーするビーナス・ウィリアムズ
2013年8月29日、USオープンのダブルス1回戦でのウィリアムズ姉妹。前後に並ぶ配置を示す資料写真であり、叫び声、妨害の申し立て、ルール違反を記録したものではありません。Edwin Martinez · CC BY 2.0 · JPEG

警告の声、痛みの叫び、うなり声は同じ扱いではない

「The Code」はロブの後の声と、けがや蜂に刺された後の叫びを対比し、後者を意図しない妨害として、相手がレットによるやり直しを求められる場合があるとしています。第36項には、説明から抜け落ちやすい条件もあります。レットを求める選手は、妨害がなければそのショットを打てた必要があります。どのみち届かなかったボールまで、騒ぎがあったことで救われるわけではありません。

うなり声については、第37項に別の指針があります。この項が対象とするうなり声などの大きな音では、妨害かどうかを判定し、やり直しや失点を決められるのはオフィシャルだけです。以前に警告があったかも考慮されます。浅いロブでの声掛けの例を、不快に感じるすべてのうなり声へ機械的に当てはめないでください。似た音でも手続きが異なることがあり、「妨害」という単語だけを引用しても、争いが収まりにくい理由です。

動きもまた別に考えます。第35項は、ボールがインプレーの間、サーバーのトス中も含めて、体でフェイントをかけたり位置を変えたりすることを認めています。一方、注意をそらすことだけを目的に、ラケットを振ったり足を踏み鳴らしたりする動きや音は認めていません。ネットでの通常の位置取りによるプレッシャーと、わざと気を散らすことは違います。見える、聞こえるというだけで違反と決めず、実際の行動を見ましょう。

緊急事態になる前に、連係を決めておく

固定ペアなら、実用的な対策はポイント開始前にもっと整理しておくことです。それぞれの頭上を越えたロブを誰が取るか、どう入れ替わるか、守備的な返球の後にどこへ立ちたいかを合意します。これは最後の瞬間の混乱を減らすための提案であり、特定の陣形を義務づけるルールでも、写真の選手たちの連係を報告したものでもありません。共通の計画があれば、相手が打つ瞬間に指示を叫ぶ必要を減らせます。

練習では、警告の声がいつ出ているかに気づくことが大切です。いつも甘いボールを相手へ送った後なら、声量不足ではなく判断の遅れが問題かもしれません。まだボールがこちらへ向かっている段階で、守備になる状況を読む練習をしましょう。目的は、適切なタイミングの有用な情報です。どんな遅い叫びも合法にするという秘密の言葉を作ることではありません。

すでに争いになったなら、順序立てて説明します。ボールはどちらへ進んでいたか、誰が打とうとしていたか、何と言ったか、妨げになったか、すぐにプレーを止めたか。その経過が、適用する手続きの判断材料になります。「ペア同士は話してよい」という一般論では肝心な詳細が抜け、「黙っていろ」という一般論では正当なダブルスの声掛けが抜け落ちます。

経験を積んだペアは、つながっているために絶えず実況する必要はありません。必要なのは明確な約束、こちらへ来るボールを処理する際の適時の声掛け、そして相手に返球させる節度です。浅いロブの場面では、「パートナーを助けたかっただけ」が本当でも、そのポイントを守れないことがあります。

出典と参考資料

  1. USTA / International Tennis Federation — Friend at Court 2026: ITF Rule 26 and The Code §§33–37

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