ストリングとテンション

暑い車内から出したラケット、冷めればストリングのテンションも戻る?

今の温度と、ストリングが経験してきた温度は別の情報。日陰に移しただけで、それまでの変化が消えるわけではない。

コートに置かれたテニスラケットと2個のテニスボール
コート上のラケットとボール。2007年に公開された資料写真で、写っているラケットは本稿の温度実験に使われたものではない。Vladsinger at English Wikipedia · CC BY-SA 3.0 · WebP

バッグから取り出したラケットは、もう熱くない。ひとまず安心するが、いつものセッティングを大切にするプレーヤーには別の疑問が残る。ストリングも、熱にさらされる前の状態へ戻ったのだろうか。フレームが冷めたという事実から分かるのは現在の温度だ。ストリングベッドに起きた変化がすべて取り消された、とまでは言えない。

ほとんど打っていない日ほど、この違いを見落としやすい。コートではなく駐車中の車で一日を過ごしたのだから、使用時間の記録に加えるものはない。しかし、ストリングはボールを打たなくても変わり得る。クロフォード・リンジーとロッド・クロスが2016年に発表した実験では、単体のストリング試料を使って温度、テンション、剛性の関係を調べた。特に目立ったのが、引っ張って一定時間置いたストリングに、その後から熱を加えた条件だった。

テンションが落ち着いた後に加わった熱

Tennis Warehouse Universityの研究では、ナチュラルガット、ケブラー、ナイロン、ポリエステルを含む14種類を使用した。ここで注目する装置では、クランプ間35センチのストリングを固定し、ロードセルで変化を記録している。完成したラケットを何本も実際の車に置いた実験ではない。ストリングにテンションをかける前後の、どの時点で加熱するかを管理した材料実験だ。

保管の問題に最も関係する手順では、まず20℃の試料を28キログラム、約62ポンドまで引っ張る。クランプ間の距離を固定したまま200秒間待ち、応力を緩和させる。その後で加熱を始め、約100秒かけて40℃へ上げた。加熱をやめてからは、さらに200秒間冷却させながらテンションを記録し続けた。

加熱中、テンションは大きく下がった。熱を取り除いた後も、以前の値へ単純に戻るのではなく、より低いテンションで再び落ち着いた。この観察結果があるからこそ、保管の影響をフレームに触れるだけで判断することはできない。現在の温度だけでは、そこへ至るまでにどんな順序で引っ張られ、熱を受けたかを説明しきれない。

研究では、引っ張る前に加熱する条件も比較した。多くの試料で、室温でテンションをかけた場合と、先に加熱した場合とでは、その後の緩和に実用上大きな違いは見られなかった。際立っていたのは、テンションをかけて初期の緩和が進んだ後に加熱した場合である。張り上がったラケットを不必要な高温に置かないという判断と、暖かい部屋で張れば必ず失敗するという主張は別物だ。

多数の内部繊維が見えるテニスストリング切断面の走査電子顕微鏡写真
バーミンガム大学のクレア・デイヴィス教授とエリザベス・チャンドラーの提供により、CORE-Materialsが2010年に公開した実際の電子顕微鏡写真。構造を示す資料であり、2016年の実験試料や熱による損傷を撮影したものではない。CORE-Materials · CC BY 2.0 · WebP

「損失が大きい」と「その割合が消えた」は違う

研究では、テンションをかけた後の加熱条件における損失が、室温条件よりストリングによって30〜76%大きかったと報告している。ここを読み違えると、「暑い車に置くとテンションの76%が消える」という恐ろしい見出しになる。そういう意味ではない。この割合は、ある条件で失われた量を、別の条件で失われた量と比較したものだ。最初のテンションの何割が失われたかを示してはいない。

計算だけを説明する仮の例を考えよう。比較対象が5ポンド失い、もう一方が7.5ポンド失ったなら、後者の損失は50%大きい。増えた2.5ポンドが5ポンドの半分だからだ。両方とも50ポンドで始まったとすれば、後者が初期値から失った割合は15%であって、50%ではない。これは論文の測定値でも、自分のラケットを車に置いた際の予測でもない。分母の違いを説明するための数字である。

温度と時間の条件にも意味がある。車内、バッグ、その中のラケットのストリングが、同じ瞬間に同じ温度になるとは限らない。この研究から、2時間の外出や特定のバッグ、現在売られているすべてのストリングの損失を一律に答えることはできない。温度が2倍なら損失も2倍、という比例計算もできない。支持される結論は、加熱の履歴が落ち着いた後のテンションを変え得るということ。個々のラケットについて、何ポンド失ったはずだと算定する公式ではない。

リンジーとクロスは、これを応力緩和の観点から説明している。力がかかったストリングの内部構造が、より応力の低い状態へ再配列し、その過程に温度が影響するという考え方だ。論文の分子レベルの説明は、実験中に顕微鏡で撮影した映像ではなく、現象を解釈する物理的説明である。周囲の温度を元に戻しても、以前の状態まで戻るとは限らない理由を理解する助けになる。

トランクから出した直後の値だけで決めない

昨日の記録があり、暑い移動の後にテンションの推定値が下がっていたとしよう。最初に残したいのは状況だ。どこに保管し、どんな環境で測ったかを記録する。いつも測る環境にラケットを自然になじませてから、同じ手順で測り直す。この研究には、どんなラケットやバッグも必ず温度が落ち着くという共通の待ち時間は示されていない。

同じラケットの同じ張り上げを、同じ方法で比べる。途中でアクセサリーやアプリの入力条件を変えないようにする。繰り返し測れば数値の不安定さに気づくことはできるが、似た値が続いたからといって、校正された実験装置の測定結果になるわけではない。その張り上げの以前の基準値がなければ、張り替えの伝票にあるマシン設定値で代用することもできない。張るときの基準テンションと、完成したラケットを後から測った推定値は異なる量だ。

比較条件をそろえても差が残るなら、記録しておく価値がある。ただし、それだけで差のすべてを熱の影響と断定することはできない。時間経過による緩和、間に挟まったプレー、測定のばらつきも関係し得る。次の張り替えからは、「通常の保管、同じ室内、打つ前」という一行が、状況不明の数値に小数点以下の桁を増やすより役立つこともある。

打感については別の問いもある。同じ研究の別の実験では、おおむね低温で剛性が高く、高温で低くなる傾向があり、ストリングごとの差も見られた。剛性とテンションは関連するが同じではない。著者らは温度がボールやプレーヤーにも影響することを指摘している。数値は低いのに意外と硬く感じるからといって、即座に測定ミスとは言えない。一つの量に、衝突全体の説明を求めているのかもしれない。

保管の実践は難しくない。可能なら暑い駐車車両からラケットを持ち出し、普通の安定した環境に置く。バッグが加熱の速さを変える可能性はあっても、この実験はバッグのモデル比較ではなく、断熱ライニングがストリングをいつまでも変化させないと確認したものでもない。断熱は限界のある補助と考え、午後の間バッグをどこに置くかにも気を配りたい。

実験を修復方法に読み替えないことも大切だ。使ったストリングベッドを家庭で安全に元へ戻す方法が確立されたわけではない。意図的に加熱したり冷やしたりすれば、管理できない温度履歴をもう一つ加えることになる。慣れた条件で確かめても反応が合わなくなったなら、温度で過去を巻き戻そうとせず、ストリンガーと張り替えを相談しよう。伝えると役立つのは、何がいつ変わり、どう比較したかである。

これは小売業者と関係のある研究機関による過去の材料実験で、自分と同じラケットを試した結果ではない。短時間暖かい場所を通るたびに張り替えが必要だという証拠でもない。今も参考になるのは、もっと具体的な点だ。ボールを一球も打たない日にも、ストリングには履歴が積み重なる。フレームが冷めて見た目が普通であることと、以前の状態へ戻ったことは、別の話なのである。

出典と参考資料

  1. Tennis Warehouse University — Crawford Lindsey and Rod Cross — The Effect of Temperature on Tennis String Tension and Stiffness

TENNIS TENSION LAB

今日、ラケットのテンションを確認しよう。

10秒以内にストリングのテンションを高精度で測定。Tension Labが初回測定からの変化を記録し、張り替え時をわかりやすく示します。

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  • 打球感の変化を クリアな記録に。
  • 張り替えどき、 もう感覚だけに頼らない。
測定値は初期テンションからの変化を推定するもので、ストリングマシンによる絶対測定の代わりにはなりません。