選手とツアー

ムホバのネットプレーは、その一球前から始まる

手首の手術後、ニューヨークへ戻ったカロリーナ・ムホバ。多彩なショットを並べるだけでは見えない、前に出る入口と次の一球に注目する。

サービス後、ベースラインの内側に着地するムホバ
2024年7月のパリ五輪でサーブを打つムホバ。全米復帰へつながる同じ夏の一枚。Kuberzog · CC BY-SA 4.0 · JPEG

サーブは97マイル、時速約156キロ。カロリーナ・ムホバはその後を追って前へ走り、体を伸ばしたバックハンドボレーを空いたコートへ短く落とした。WTAが2024年全米のポタポワ戦記事で描いた場面だ。サービスからボレーまでの間に、勝負する距離を変えていた。

その年の2月、ムホバは右手首の手術を受けた。復帰は6月の芝シーズン。ニューヨークでは、再び試合ができること自体が大きな成果だった。全米のインタビューでも、今年いちばんの勝利はまたテニスができるようになったことだと話している。華麗な一球を待つ観客と、競技生活を組み直す本人とでは、出発点が違っていた。

ムホバを「多彩」と評するのは簡単だ。ただ、スライス、ドロップショット、ボレーと列挙しても、そのポイントの成り立ちはわからない。同じネットでの得点でも、サーブに続いて入る場合と、リターンやラリーの後に出る場合がある。進路を開いた一球を見ると、技術の一覧が実際の選択に変わる。

2024年のニューヨークには、うまくいった前進も、難しくなった前進もあった。大坂なおみ戦ではリターンについて入り得点した一方、同じ試合の後半には急いだネットプレーで失点した。ジャスミン・パオリーニ戦ではサーブとネットの両方で立ち上がりを修正。ジェシカ・ペグラは沈むリターンと長いラリーで対抗した。そこにポタポワ戦のサーブ&ボレーを重ねると、違いが見える。

大坂戦、同じ前進でも到着した先の球が違う

8月29日、ムホバは大坂に6–3、7–6(5)で勝った。Tennis.comのスティーブ・ティグナーは、第1セットのあるブレークゲームの始まりを、バックハンドリターンに続いてネットへ出てボレーを決めたポイントとして記している。サーブを返しながら、次の打球位置も変えた。大坂が相手にする場所はベースライン後方だけではなくなった。

そのゲームでは、意図を隠したドロップショット、さらに質の高いリターンでも大坂を困らせた。これは別々のポイントでの選択だ。自分が前へ行く、相手を前へ動かす、リターンで圧力をかける。それぞれが次の一球までの距離と準備時間を変えていた。

第2セット4–4では、その前進が得点に結びつかなかった。ティグナーは、ムホバが急いでネットへ入り、比較的簡単なボレーを二本ミスしたと報じた。大坂はブレークし、5–4のサービスゲームで40–0まで進んだ。向かう先は同じでも、着いた場所での処理は違う。この時間帯を抜くと、勝利があまりにも滑らかに見えてしまう。

大坂は三つのセットポイントで、フォアハンドのミスを二つ、ダブルフォルトを一つ犯した。5–5からタイブレークへ進み、そこでも大坂の4–2リードから流れが動いた。ムホバはサーブでの得点やクロスのフォアハンドパスを加えて勝利へ進む。ネットへ出る選手も後方から点を取り、相手のミスもセットの結末に関わっていた。

見直すなら、前進したポイントをまとめて比べてみたい。入口はサーブかリターンか。最初の返球はどの高さに来たか。一本目のボレーで終わったか、もう一球必要だったか。全米公式のロングハイライトは、その試合へ入る手掛かりになる。選ばれた映像と試合全体の集計は、それぞれ別の情報を持つ。

大坂対ムホバ:2024年全米2回戦ロングハイライト全米オープン公式。サーブやリターンの後の前進が、どんな次の一球を生むかを追う。US Open Tennis Championships · Watch on YouTube ↗Press play to load the YouTube player.
白いサンバイザーを着け、ラケットを前に持つ大坂なおみ
2017年ウィンブルドンの大坂。2024年全米2回戦のムホバ戦では、第2セットのセットポイントまで進んだ。si.robi · CC BY-SA 2.0 · JPEG

サーブ&ボレーを支えたサービスゲーム

2日後、ムホバはアナスタシア・ポタポワに6–4、6–2で勝ち、8本のエースを決め、一度もブレークされなかった。WTAが記した97マイルのサーブとバックハンドボレーは、そんな試合の一場面だ。サーブで直接取る点と、前に出て締める点が同居していた。打った後にどこで続きをプレーするかも、サービスの選択に含まれる。

同記事は、ムホバがバックハンドスライスを繰り返し使ったと伝えている。ウイナーとアンフォーストエラーはムホバが24本と11本、ポタポワが16本と29本だった。相手の全ミスをスライスの効果にはできないが、多様に攻めたムホバが自分のミスも抑えた結果は残る。ショットの種類と、最後まで正確に処理したかを一緒に見たい。

3回戦終了時点で、ネットポイントは65点中49点を獲得。別枠で示されたサーブ&ボレーは、23回中19点だった。サーブ直後の前進がネットの成績すべてを占めるわけではない。リターンに続く前進や、ラリー中に前方へ移るポイントにも、分けて注目する理由がある。

2024年全米のムホバ。WTAの8月31日・9月2日記事と全仏の9月5日プレビューによる。得点/試行数で、集計時点は異なる。
集計時点項目得点/試行範囲
3回戦後全ネットポイント49/65最初の3試合
3回戦後サーブ&ボレー19/23サーブ後の前進
パオリーニとの4回戦全ネットポイント11/14この試合のみ
4回戦後全ネットポイント60/79最初の4試合
準々決勝後サーブ&ボレー29/36最初の5試合

表には違う時点と項目が並ぶ。49/65は最初の3試合まで、60/79はパオリーニ戦までのネットポイント。19/23と29/36は、それぞれ3回戦後と準々決勝後のサーブ&ボレーだ。成功率の高い戦法を順位づけるように読めば、試合もポイントの種類も混ざってしまう。何を数えた数字かを残すことが、使い道を決める。

ムホバ本人の説明は、その数値に生活の背景を与える。WTAには前年の自分と比べたくないと語り、手術後にはまたプレーできるかわからなかったとも話した。痛みなく競技できることへの感謝が先にあった。最後の一打を選ぶ以前に、サーブを打ち、移動し、続けて試合をする時間が戻っていた。

パオリーニ戦、立て直したのはネット際だけではない

9月2日の入りは落ち着かなかった。ムホバは緊張していたと認め、風も吹いていた。WTAは、移動中に何度かバランスを崩し、前進を決める動きも遅れていたと報じた。第1セットは1–3。前のラウンドまでの良いネット成績が、その日のタイミングを整えてくれるわけではなかった。

スライス、ドロップショット、反応で合わせたボレーが、ブレークバックして3–3にする過程を助けた。記事はその後の近距離の応酬で、繊細なドロップボレーが出たことも伝えている。多彩な技術は、スコアを戻し、相手に違う動きを要求するゲームの中で使われた。いつ選んだかが、技術に意味を与えていた。

同時に、サーブで失うポイントが減った。1–3以降、自分のサービスで落としたのはあと5点だけ。第2セット全体では2点だった。鮮やかなネットの交換だけを追っていると、この土台を見逃しやすい。サービスを固く守ることで、パオリーニが追いかける余地は小さくなり、リターンゲームの攻撃もスコア上で効いてくる。

この試合のネットポイントは14点中11点。前の49/65に加えると60/79となる。序盤のためらいも、その後の安定も、一つの試合数値に入っている。6–3、6–3という結果に加えて、ミスがどの局面に集まり、いつからサービスゲームが安定したかまで見ると、その日の変化がわかる。

後にムホバは、積極的なダウンザラインやネットプレーで点を取ると感触が良くなり、自分のショットを信頼できるようになると説明した。成功した具体的な行動から始まる話だ。その経験を追うなら、流れに乗った時間帯と、まだタイミングを探していた最初の数ゲームを並べておきたい。

シンシナティのダブルスでフォアハンドを打つパオリーニ
2024年8月シンシナティのパオリーニ。写真はダブルス。ムホバとの全米シングルスは同じハードコートシーズンに行われた。Navin75 · CC BY-SA 2.0 · JPEG

ペグラは最初の返球を沈め、もう一球を求めた

準々決勝でベアトリス・ハダッドマイアを6–1、6–4で破り、ムホバは5試合連続でセットを落とさず勝った。その試合ではファーストサーブの37ポイント中29ポイントを取り、許したブレークは一度。全仏公式サイトの準決勝プレビューでは、ここまでのサーブ&ボレーを36回中29点と記している。前進は繰り返し選ぶプレーになっていた。

9月5日のペグラとの準決勝でも、ムホバは第1セットを6–1で取り、第2セット2–0と先行した。ペグラは後に、ムホバはリズムを与えてくれない難しい相手だったと話す。ただ、次の2ゲームで応答が変わった。ブレークポイントをしのいで2–1とした後、前へ来るムホバに沈むリターンを送り、初めてサーブを破った。

この返球は、「ネットに出た」の先へ視線を向ける。最初の球が低ければ、前進する側の打点も低くなり、締め方の選択肢が変わる。ペグラは、ムホバがそれまで使ってきた道筋に介入する場所を見つけた。攻める側の選択と、それに返ってくる球の両方が、次の条件を作る。

ペグラはラリーも長くした。WTAによれば、9打のラリーでブレークポイントをしのぎ、サービスを守って3–2。さらに10分のゲームでムホバのサーブを破った。ムホバは4–4へ戻したものの、第2セットを失う。最初の転機の後にも新しいラリーと抵抗があり、一度のボレーミスだけでは全体を説明できない。

結果はムホバから見て6–1、4–6、2–6。最終セットにもブレークの機会はあったが、追いつけなかった。前の5試合のネット成績とこの敗戦を並べると、次の観戦で問うことが具体的になる。前へ出る頻度に加え、低い最初の返球をどう扱い、その後のラリーをどう続けるかだ。

全仏の練習コートで黒いサンバイザーを着けるペグラ
2023年全仏で練習するペグラ。翌年の全米準決勝では、沈むリターンと長いラリーでムホバに応じた。Hameltion · CC BY-SA 4.0 · JPEG
2024年ニューヨークで変わった観戦の問い。スコアはムホバから見たもの、日付は現地。
日付・相手スコア見るポイント
8月29日・大坂6–3、7–6(5)リターン後の前進と急いだネット進出の差
8月31日・ポタポワ6–4、6–2サーブについて入った後に来る球
9月2日・パオリーニ6–3、6–31–3以降のサーブと動きの安定
9月4日・ハダッドマイア6–1、6–4ファーストサーブの得点とキープ
9月5日・ペグラ6–1、4–6、2–6低いリターンと長いラリーへの対応

準々決勝後、ムホバは2月を振り返り、いつも前向きでいられたわけではなかったと話した。腕を動かせず、できることが少ないつらい日もあった。WTAには、苦しい数日の後に気持ちを立て直し、回復へ向けて今できる最初の一歩に集中しようとしたと説明。医師やチームの支えにも触れた。ニューヨークで選択肢を持つ前に、コートへ戻るための時間があった。

次に見る時は、最後のボレーから一球前へ視線を戻したい。サーブやリターンは相手をどこに置いたか。返球の高さはどうか。次の打球を準備する時間はあるか。前進せず、もう一本スライスを使ったポイントも含めると、持っている技術を使う場面を探す選択が見える。

ニューヨークで彼女がまず感謝したのは、またテニスができることだった。その先に、サーブについて入る、リターンを追う、ネット際で球を短く落とすといった判断が戻ってきた。見る楽しさは一つの鮮やかな決め球を越えて続く。どの距離で次の球に会おうとするのか、相手は何を返すのか。それが変化し続けるからだ。

出典と参考資料

  1. WTA — Healthy and in command, Muchova’s talent takes center stage at US Open
  2. Tennis.com — Karolina Muchova defeats Naomi Osaka at US Open after two sets of plot twists
  3. WTA — After injury, Muchova returns to US Open quarterfinals
  4. WTA — US Open semifinal preview: Can Pegula, Navarro set up an all-American final?
  5. Roland-Garros — US Open 2024: Women’s semi-finals
  6. WTA — Pegula’s breakthrough continues, edges Muchova to reach US Open final
  7. US Open — Teeming with talent and injury-free, Karolina Muchova looks to soar at 2024 US Open
  8. WTA — Muchova holds off Haddad Maia to reach second straight US Open semifinal
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