選手とツアー

アンディ・マリーのデビス杯決勝、3勝を生んだ三つの仕事

ヘントで英国が挙げた3勝には、それぞれ違う解決策があった。兄のリターン時に後ろへ下がった判断も、その一つだ。

体を前へ伸ばしてフォアハンドボレーを打つアンディ・マリー
2011年10月6日、ジャパンオープンのアンディ・マリー。ネット際の技術も持ち味だが、2015年決勝のダブルスでは後方に残る配置が重要な変更になった。Christopher Johnson · CC BY-SA 2.0 · JPEG

アンディ・マリーは2015年デビスカップ決勝で、英国が挙げた3勝すべてに関わった。ただし、金曜から日曜まで同じやり方で勝ったわけではない。初日は第4セットに入りかけたシングルスを締め、翌日は兄ジェイミーとのダブルスで立ち位置を変えた。最終日はダヴィド・ゴファンの攻勢に耐え、自分のサービスゲームを守ってから反撃へ移った。3勝の中身を分けると、エースの仕事が具体的に見えてくる。

英国はヘントの室内クレーでベルギーを3–1で破り、1936年以来79年ぶりの優勝を果たした。2026年のファイナル8は11月24〜29日にボローニャで開催され、英国は26日にドイツと対戦する。現在と当時では試合構成が違う。それでも、個人の強さをチームの1勝にどうつなげるかという問いは変わらない。

金曜日:2セットの貯金だけでは試合は終わらない

最初のシングルスでカイル・エドマンドはゴファンから2セットを先取しながら、フルセットで敗れた。続くアンディはルベン・ベーメルマンスに6–3、6–2で先行したが、第3セットは2–4とリードを許した。試合全体の優位と、目の前のセットを取り切れるかどうかは別の課題だった。

ロイターの当日報道によると、ベーメルマンスは5–4でアンディのサーブを受ける場面でセットポイントを迎えた。しかし、フォアハンドのリターンが長くなった。アンディは最後に7–5でこのセットを取った。すべてのピンチを鮮やかなウィナーで切り抜けたわけではない。相手が逃した機会の後で、第4セットを始めさせずに決着をつけたことが重要だ。

これで英国は1–1に追いついて土曜のダブルスへ進んだ。翌日も翌々日も出番があるアンディにとって、金曜の仕事は3セットで終わった。もう1セット戦う可能性があった時間帯を通り抜けて、試合を閉じたのである。ストレート勝ちという結果だけでは、その境目が見えにくい。

2015年決勝。日付はベルギー現地、国別スコアは英国が左
日付・試合勝者とスコア国別スコア次の課題
11月27日・第1単打ゴファン 3–6、1–6、6–2、6–1、6–00–1アンディが同点を狙う
11月27日・第2単打アンディ 6–3、6–2、7–51–1土曜のダブルス
11月28日・複マリー兄弟 6–4、4–6、6–3、6–22–1日曜にあと1勝
11月29日・第1単打アンディ 6–3、7–5、6–33–1優勝決定
奥のコートからサーブするアンディ・マリーと、構えるラファエル・ナダル
2011年9月10日、ニューヨークの全米オープン。マリーのサーブとナダルのリターン位置が見える。ヘントでは、自分のサービスゲームを守った後にリターンの機会をつかむ順序が重要だった。Madeleine Ball · CC BY-SA 2.0 · WebP

土曜日:兄を助けるために、ネットを離れた

アンディとジェイミーはスティーブ・ダルシス、ゴファンと最初の2セットを分け合った。Sky Sportsのアンディ・スクーラーが報じた変更は、第3セットで英国組が1–2とされた場面だ。レオン・スミス監督はルイ・カイエ、ニック・ウィール両コーチと相談し、ジェイミーのリターン時にアンディが後方へ残る配置にした。ベルギーのネットプレーヤーを狙う方針も合わせて採った。

リターン側のパートナーがネットにいれば、早い段階でボールに触れられる。一方、相手の最初のボレーを近距離で受ける標的にもなる。下がる選択は、早い介入の機会を一部手放す代わりに、次のボールへ対応する空間を取る判断だ。シングルスのエースが前へ出て多くを引き受けたのではなく、兄のリターン後を2人で処理しやすいよう、自分の出発点を変えた。

アンディは試合後、この変更を肯定的に評価した。また、ジェイミーを信頼する理由は兄だからというだけでなく、優れたダブルス選手だからだと説明した。ジェイミーは、2人が慌てず落ち着きを保った点を挙げた。「相手を信頼する」という言葉の横に、実際に変わった配置がある。パートナーの復調を待つだけでなく、2人の仕事を組み直していた。

ただし、変更後も楽な展開ではなかった。APによれば、第4セット第4ゲームで兄弟は七つのブレークポイントをしのいだ。最終スコアは6–4、4–6、6–3、6–2。リターン時の配置を改善しても、自分たちのサービスゲームは改めて守らなければならない。戦術上の変更と、その後のポイントを取り切る実行力がそろって初めて1勝になった。

七つのブレークポイントとは、七つのサービスゲームを守ったという意味ではなく、一つのゲームで相手に七度の機会があったということだ。そのたびにベルギーはセットの流れを変えられた。最後の6–2には、その1ゲームに集中した圧力が表れにくい。

リターンの配置変更と、このキープも分けて読む必要がある。ジェイミーがリターンするときのアンディの位置は、受ける側のポイントの始め方だ。一方、ブレークポイントをしのぐのはサーブ側の仕事になる。一つの配置変更ですべてを説明せず、異なる仕事が合わさって勝利になったと捉えたい。

英国は2–1で日曜を迎えた。スミスが強調したのは、優勝を決める機会が二つになったことだった。ダブルスの価値は土曜の勝敗だけに収まらない。翌日のシングルスに残された条件まで変えた。出場者の名前だけならエースの兼任が目立つが、国別のスコアを加えると、その勝利がチームに何を残したかが分かる。

土曜終了時点でゴファンは9セット、アンディは7セットを戦っていた。ゴファンは単打5セットと複4セット、アンディは単打3セットと複4セットだ。APの集計は、この決勝週末に終えた分量を比べる数字であり、各ポイントの長さや強度まで換算した疲労の指標ではない。

日曜日:キープが、反撃を待つ時間をつくった

最後のシングルスは6–3、7–5、6–3。この数字以上に、ゴファンが先に仕掛ける時間もあった。第1セット2–2ではゴファンがブレークポイントを握った。アンディはキープし、続いて相手の甘いセカンドサーブをバックハンドのウィナーで捉え、4–2へ抜け出した。ロイターが伝えた順番では、リターンでの成果の前に、自分のゲームを渡さなかった仕事がある。

第2セットはゴファンが先にサーブし、スコア上で先行し続けた。Tennis.comのスティーブ・ティグナーは、アンディが3–4から2本のエースを決め、ラブゲームでキープした場面を取り上げている。ここではベースラインでさらに走るのではなく、サーブで相手がラリーに入る機会を減らした。次のリターンゲームを待つ間、自分のゲームを長引かせずに並んだ。

セット終盤には別の解決があった。ティグナーの記述では、ゴファンのバックハンドのダウンザラインを追ったアンディが、走りながらフォアハンドをクロスへ返す。ゴファンの次のフォアハンドはネットにかかった。ロイターも第11ゲームのブレークと、その後のセット獲得を記録している。追いかけていた側が方向を変え、攻めていた側に次の処理を迫った場面だった。

芝のコートでサーブを準備するダヴィド・ゴファン
2024年6月24日、ウィンブルドン予選のゴファン。2015年の最終単打第2セットでは先にサーブし、マリーにスコアを追わせた。Daniel Cooper · CC BY-SA 2.0 · JPEG

第3セットではアンディが先にブレークされたが、取り返して5–3とリードした。最後のバックハンドロブは優勝を象徴する一打になった。ただ、その一打に至るまでには、危機でのキープ、セカンドサーブへの攻撃、走りながらのフォアハンド、先に失ったゲームの挽回があった。最後のショットだけを残すと、そこまで道をつないだ異なる技術が抜け落ちる。

11勝の中には、1人の仕事と2人の仕事がある

アンディの2015年デビスカップの成績は、シングルス8勝とジェイミーとのダブルス3勝だった。同じ11勝にも、自分だけでコートを受け持つ試合と、パートナーと組み立てる試合が混ざっている。LTAの回顧記事は、米国との初戦でジェームズ・ウォードがジョン・イズナーを5セットで破った勝利も伝えている。決勝の3勝をアンディが担った事実で、シーズン全体の仲間の仕事を塗りつぶすことはできない。

LTAの優勝10周年ドキュメンタリーでは、当時のメンバーとスミスが道のりを振り返る。スコア表と合わせれば、中心選手のシングルス成績の先に、ダブルスのパートナーや他の選手の経験を重ねられる。当日の記事は具体的な判断を伝え、後年の映像はチームに残った記憶を届ける。

LTA:英国の2015年デビスカップ優勝から10年LTA公式ドキュメンタリー。当時のメンバーとレオン・スミス監督が優勝への道のりを振り返る。LTA · Watch on YouTube ↗Press play to load the YouTube player.

ボローニャのファイナル8は、シングルス2試合の後にダブルスを行う。同じ選手が一つの国別対戦で単打2勝、複1勝を挙げる2015年の経路は、この段階にはない。英国対ドイツでは、リターンする選手と同時に、そのパートナーの立ち位置にも目を向けたい。どこから動き、誰の次のショットを打ちやすくしているか。マリー兄弟の決勝から持ち帰れるのは、その具体的な問いだ。

出典と参考資料

  1. LTA — Great Britain’s journey to the 2015 Davis Cup title
  2. Reuters / ABC News — Andy Murray levels Davis final for Britain as Goffin survives scare
  3. Associated Press / KSL — Britain wins doubles, 1 point away from Davis Cup title
  4. Sky Sports — Andy Schooler — Davis Cup final: Andy Murray’s trust in brother Jamie rewarded
  5. Tennis.com — Steve Tignor — The Man Who Couldn’t Lose
  6. Reuters / ABC News — Britain wins first Davis Cup in 79 years with Andy Murray-inspired 3-1 win over Belgium in final
  7. LTA — Davis Cup 2026: Great Britain draw Germany in quarter-final
関連する話題 →訂正を提案 ↗

TENNIS TENSION LAB

今日、ラケットのテンションを確認しよう。

10秒以内にストリングのテンションを高精度で測定。Tension Labが初回測定からの変化を記録し、張り替え時をわかりやすく示します。

  • ストリングのテンションを高精度で測定。 10秒以内に完了。
  • 打球感の変化を クリアな記録に。
  • 張り替えどき、 もう感覚だけに頼らない。
測定値は初期テンションからの変化を推定するもので、ストリングマシンによる絶対測定の代わりにはなりません。